短編小説・ショートショート【極楽堂】

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あなたのために

 送信履歴から、見慣れた番号を呼び出す。
 今まで数え切れないほど行ってきた動作だが、今日はいつものようにスムーズにはいかなかい。
(04枚) 081

電話入門

「よろしくお願いします」
 そう言って若い男が軽く頭を下げた。
(06枚) 082

フタリのオワリ

「もう終わりにしようと思うの」
 薄暗い部屋の一室。
 室内には静けさが漂っていたが、部屋の外は幾人もの人が行きかい、活気づいている。
(03枚) 083

恋人の義務

「なんか、怒ってる?」
 無言のまま、七分ばかり人ごみの中をすり抜けていくヨーコにカズトが尋ねる。
「別に怒ってないし」
(05枚) 084

暗中作法

 つくられた闇の中、大勢の人々が息を潜めて座っている。
 こんなにたくさんの人がいるのに、ほとんど話し声が聞こえないというのは、かなり非日常的な感覚がする。
(06枚) 085

キミノオク

「いいから見せろよ」
「やよ、恥ずかしい」
「なに言ってんだよ、今更」
「だって……」
(02枚) 086

後悔は苦しみと共に

 周りの人はあんなに止めようとしてくれたではないか。
 その制止を振り切ってまで、行動したりするから、このような目に遭うのだ。
(03枚) 087

儚く造られしものたち

 何のために造られたのか。
 その理由は分からない。
 そもそも理由などというものがあるのだろうか。
(03枚) 088

コトバとココロ

「だからぁ、違うって言ってるでしょ。そんなんじゃないの。あれはただの友だちなんだから。うん。そう。うん。違う違う」
 その女性はさっきからずっとケータイで話をしていた。
(03枚) 089

キリサメドライブ

 寒い夜だった。
 霧のような冷たい雨の中、茶色のトレンチコートに身を包んだ男が道路の脇で手を上げている。
(07枚) 090
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