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勝負の真相
目の前に見たこともないような大金を提示され、一瞬呼吸をするのを忘れてしまう。
「これで、どうにかならないかね」
射るような視線に、思わず萎縮してしまう。すっと視線をそらす。全身がカッと熱くなり、心臓は高鳴る。相手にもその鼓動が伝わるのではないか、と思うほどに。
再び目を向けると、彼は黙ってわたしを見据え、返事を待っている。
どうしようか……。
家ではお腹を空かせた子どもたちが、わたしの帰りを待ちわびている。
それを考えると、自ずと首はゆっくりと縦に倒れた。
「イエスと受け取っていいんだね」
一言一言を噛んで含めるような確認の言葉。
消え入りそうな声で「はい」というのが精一杯だった。
地位や名誉はもちろん欲しい。
しかし、食べるものがなくては、生きてはいけないのだ。
背に腹は変えられぬ。
そう自分に言い聞かせてみても、心の奥で執拗に責め立てる自分がいた。
しょうがない。
しょうがないのだ。
晴れ渡った空の下、みんなの歓声の中でウサギと亀が、かけっこで競争をしました。
亀に大差をつけたウサギは、途中で一眠りしてしまいました。
そして、寝ているウサギを追い越し、亀が先にゴールしました。
みんなに讃えられ喜んでいる亀の横で、ウサギは悔しくて、しくしくと泣きました。
Mar. 9,2003