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世界崩壊
世界が終わる。
そう思った。
手にはまだ暖かく赤い液体がしたたっている。
いっときの感情に身を任せ、こんなことに。
相手のことを愛せば愛すほど、その憎しみも増すというものだ。
可愛さあまって、憎さ百倍。
さっきまでおれの感情を逆なでていた彼女の厚い唇は、もうその活動をやめてしまった。二重の大きな瞳もまた、動くことはない。
自分が犯したことの重大さに、身体が震える。
なんてことをしてしまったんだ。
後悔してももう遅い。
彼女を助けるすべはもうない。
あとはもう、この世界が朽ちていくのを見ることしかできない。
冷たくなったイヴを腕に抱きかかえ、おれは涙が枯れるまで泣き叫んだ。
Mar.1,2004