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capture in tambo

 今でもまだあるのだろうか。
 イナゴとり。
 わたしの通っていた小学校は「田んぼに囲まれたのどかな田舎」というわけでもなく、「ビルが立ち並ぶ喧噪の都市」というわけでもなかった。
 ちょっと行けば大型のスーパーや飲食店が軒を連ね、またちょっと行けば一面に広がる田んぼという中途半端な住宅街だ。
 だからこそなのか、秋になると何学年かでまとまって、イナゴを取りにいくというイベントがあった。
 手にビニール袋をもち、学校指定のジャージ姿で練り歩く大量の小学生。
 一見すると清掃活動のようだ。
 田んぼに着くと、ある程度自由となり、各々が好きな人同士で集まり、狩りを始める。残酷さMAXの男子小学生にとって、イナゴなどはカマキリらのエサに過ぎず、捕獲するのは朝飯前である。
 キャーキャー騒いでいる女子を横目に、我らは談笑しながら、イナゴを取りまくった。
 本当に取りまくったのだ。
 大きなゴミ袋が何袋かいっぱいになるほど、イナゴたちはどんどん拿捕されていった。
 さすがに数時間が経つと、それにも飽き始め、今度はザリガニを取り出した。
 ザリガニというのは、我々にとってカブトムシやクワガタに並ぶほど、カッコEものであった。
 なんといってもあのハサミが強そうだし、そして情熱の赤のボディも魅力的である。
 一時期、数十匹を発砲スチロールの箱に入れて、一人で飼っていたことがあるが、これはもう匂いがすごかった。
 さすがにザリガニとなると、イナゴのようにガンガンとれるわけでもない。我々はもてる技術を駆使し、追い込み、捕獲などの作業を分担しながら、狩りを進めた。
 こうして我々は膨大な数の小さな生命を捕獲し、学校に戻った。
 次の朝、学校に近付くと、妙に臭い。嗅いだことのない悪臭が職員室の前から漂う。
 Oh,my!
 真っ赤にゆであがった数十のザリガニの殻が職員室の前に捨ててある。
 おいおい、食ったのかよ、先生たち。
 まったくその話題に触れられることなく、授業が始まり、昼時となる。
 そして、給食と共にならぶイナゴの佃煮。
 喚声と悲鳴が教室を支配する。
 真黒になったイナゴが恨めしそうに我らを見上げている。もちろん五体満足なのはまだマシで、足が取れたり、身体が分解しているやつはなかなかにグロイ。
 結局、なんだかんだ言って、ほとんどみんな食べた。
 正直、二度とは食べたくない。
 今思うと、このイベントは我々子どもたちに何を教えるためにあったのだろうか……。

Sep. 22, 2008


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