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米国からの刺客

 きっかけはインターネットだった。
 ハンバーガーを100個頼むという偉大な挑戦を目の当たりにしたわたしは、早速友人らにその話をした。
 すると彼らは瞳を輝かせ、ぜひともやってみたいと言い出した。
 4人で100個はいくらなんでも無謀だろうと考え「とりあえず50個でやろう」と提案すると、Aは「50個だとインパクトないなぁ」といささか不満顔であった。なんとかそれをなだめすかし、後日我々はマックに集結した。
「ハンバーガー50個ください」と、普通の顔でAが注文すると、店員は「ご、50個ですかっ?」と、思わず0円スマイルを忘れてしまった。その光景を階段の陰でほくそ笑みながら見守る他3人。怪しい。
 さすがにしばらく時間がかかるということなので、席につき決戦のときを待つ。
「何個くらいいけますかね?」
「よくて10個くらいじゃね?」
「その気になれば15個はいける」
「オレ、5個くらいでダメかも」
 などと話をしていると、第一陣が登場した。
 1枚のプレートに載せられた、熱を帯びる10個の丸い物体。このくらいならまだ大したことはない。
「10個ずつ来るんすかね」
「それだと冷めそうだな」
 不安をよそに第二陣が到着。
「まさか40個一気にくるとは」
 つなげられたテーブルの上に広がる50個の丸い物体。あまりにも壮観な眺めに、意味不明な笑みがこぼれる。
 いやはや、これは……。
「さあ、戦いの始まりだ」
 勇気を奮い立たせ、敵を食べ始める。3個くらいまでは楽勝で食べきるが、5個くらいから雲行きが怪しくなってくる。敵を侮っていたことを痛感し、その恐ろしさに戦慄する。
 6個目になると世界が変わり、ほとんど味を感じなくなってくる。
 ひとりはそれを「イカを食べているようだ」と形容した。味がなく、歯ごたえだけが感じられるからだ。
「甘くみすぎてましたね」
「まさかこんなにすごいとは」
「いや、我々はよく戦ったよ」
 結局、各自7個ずつ食べ、残りの22個が我々をあざ笑うかのようにテーブルの上に鎮座している。
 持って帰るにも袋がなかったので、Aのパーカーのフードとポケットに無理やり22個をつめてみると、何とか収まった。
 こんもりとハンバーガーを身にまとった、珍妙にして滑稽なるAに対し、街行く人は2度見したり、見て見ぬフリをしているようだった。
 もし街中でこのような人を見かけたら、温かい目で見守ってあげてくださいね。

Sep. 20, 2006


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