短編小説・ショートショート【極楽堂】

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Wの悲劇

「ボクらには無限の可能性があると思うんだよ」
「は? まだそんなこと言ってるのか」
「なんだよ。悪いのか」
「悪くはねえけどよ、結局おれらの未来なんて決まりきってるんだぜ。同じような型にはめられて、はいそれまでよ、と」
「キミは、夢も希望もないな」
「あったりめえよ。こんなところに薄暗いところに閉じ込められてちゃ、夢も希望もあったもんじゃねえ」
「こういうところにいるからこそ、夢や希望が大切なんじゃないか」
「はいはい。ご高説は結構。結局ただ少し大きくなるだけだって」
「ボクはもっともっと大きくなって、あの大空に飛び出したい」
「確かにもともとはそういう可能性もあったかもしれない。けど、もうだめだ。ここから出るときは、おれたちはみんな同じようなツラで出て行くに違いない」
「そんな……」
「それは今晩かもしれねえし、明日かもしれない。もしかすると、もうすぐかもしれない。結局はおれらの意志じゃなく、あっちまかせってことだ」
「はあ。やっぱりそうなのかな」
「ま、そんな肩を落とすなって。みんな同じようにキレイに整えられるわけだしよ」
「そんな没個性的なのはイヤだ」
 ガタッ。
 ガタガタガタッ。
「ほら、そうこう言ってる間におれらの番みたいだぜ」
「あー、悔しいな。ボクは水蒸気ってのに憧れてたのに。それで大空を飛びたかったよ」
「おれはペットボトルってのに入りたかったな。それで猫を驚かせるんだ」
「まったく。こんなふうに機械で氷になるなんてイヤだー!」
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