短編小説・ショートショート【極楽堂】
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ギザギザハートの憂鬱
おれだって、いつもとがっているわけじゃない。自分を守るためにそうなってしまうだけ。
誰だって傷つけられたくはないだろ?
少なくともおれは嫌なんだ。
キレてしまえば、自分でも手がつけられないことはわかっている。そんなことを繰り返しているうちに、だんだんとおれの側に寄ってくるやつも減ってしまった。
へっ、有名になったもんだぜ。
でも、本当にこれでよかったのか?
いちいちキレては周りのやつを傷つけ、それで恐れられて、孤立してしまう。
こんなことがおれの望みだったのか?
もう遅い。
身体は勝手に反応してしまうんだ。
自分の意思とは関係なくな。
ん?
何かの気配が。
あぁ。だめだ。身体が、身体が……。
他の魚が寄ってくると、彼の全身からトゲが現れた。
彼の憂鬱は終わりそうにない。
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