短編小説・ショートショート【極楽堂】

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夢にも思わない

「ずっと、好きでした」
 聞きなれた彼女の声がぼくにそう告げた。
 小さいときからの幼馴染は、今このときから恋人に変わるのだ。
 性格は控えめで、成績も優秀、見た目にはあどけなさが残る彼女は、控えめに見ても「かわいい」という基準を越えているだろう。
 今ぼくの前で、顔を真っ赤にしている彼女がとても愛しい。
 一方、ぼくの方はというと、顔は人並み、成績は中の下、運動神経もいいわけではない。
 そんなぼくに彼女が告白してくれるとは夢のようだった。
 返事はもちろん「イエス」だが、少しの間、その幸せをかみしめる。
 自然とぼくの顔もほころぶ。
「ぼくも、君のことがすきだった」
 正直な気持ちが彼女に向かって、発せられる。
 彼女は満面の笑みで、ぼくの方を見つめる。
 その目には、涙さえ浮かんでいる。
 なんて可愛いんだろう。
 最近の若い女の子とは大違いだ。
 ひしと思いながら、彼女の方を見つめる。
 見つめあう二人。
 まさにそれは恋人同士のものだった。
 この幸せがずっと続けばいいのに……。

「馬鹿じゃないの?」
 突然の一言。
 何が起こったのか分からなかった。
 夢心地の気持ちが一気に、さめていく。
「たかがゲームでしょ」
 頭を鈍器のようなもので殴られた衝撃。
 幸せは、その一言ですっかり消えてしまった。
 まさか、ディスプレイの中の彼女から、そんなセリフを聞くことになるとは……
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