カテゴリー : 遊戯

サムライ&ドラゴンズ

今現在(2012年11月)、第2シーズンが行われているPSVITAのゲームである。
iPhoneの「キングダム・コンクエスト」というゲームを基にして作られており、VITAでは当時、他に類を見なかった基本プレイ無料のゲームだった。
領地を取り合うシミュレーション、ダンジョンにもぐるアクション、デッキを組み合わせるカードと盛りだくさんの内容である。
雑誌で見かけ、気になっていたわたしはこれを機にVITA本体を購入。期待を胸に配信日を待った。
03月29日、配信開始
オンラインゲームでは往々にして起こるアクセス集中。結局ゲームが開始できず、さらに開始日は延期されることに。
04月17日 ゲーム開始
ようやくゲームが開始された。知人と同盟を設立し、いろいろ情報交換しつつ、試行錯誤。とりあえず同盟人数を増やそうと思い、近隣の人にゲーム内メッセージを使って呼びかける。初日はランキング21位だった。
ランキング上位だったせいか、加盟希望者がどんどん集まり、さらに規模が拡大していく。
人が増えていくとトラブルが起こるもので、やたら威圧的なメールをしてくる同盟員が現れる。「あなたの意志にそぐわないようなので、この同盟を出て、自分で新しい同盟を立ち上げたらどうでしょう?」という旨の返信をする。すると、形だけの謝罪のメッセージがくる。メンドクセ-。(現にこの後何回か面倒なことになった)
数日後、他の同盟に攻め込まれる。
一応、1時間前くらいに宣戦布告のメッセージが届いていたようだが、ちょうどそのとき離れていたため、どうにもならなかった。
このゲームでは盟主が攻め落とされると、強制的に傘下同盟になってしまう。というわけで、我が同盟は傘下に。
外部チャットを用い、今後の方針を話し合う。とりあえず盟主を知人に譲ることにする。
後日、先日攻めてきた同盟の言い分が誤解であったことが分かり、何とか交渉の末に独立成功。
新盟主となった知人は同盟内イベントなども積極的に行い、さらに我が同盟は勢いを増す。
ただすでにワールド全体が、ある同盟一色の流れになりつつあった。
何とかそれに対抗するため、他の同盟と合併をすることに。
そこから数日後、この世界を支配しつつある同盟からの宣戦布告。奮闘するも、圧倒的な戦力差で落城。またもや傘下に。
3ヶ月1シーズンという予定だったが、結局終了したのは09月24日で、5ヶ月以上も続いた。長く辛い戦いだった。
感想から言うと決して面白くなくはない。
ただもう二度とやりたいとは思わない。


キミが人狼 7

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キミが人狼1 キミが人狼2 キミが人狼3

キミが人狼4 キミが人狼5 キミが人狼6

「みなさん目を開けてください。今回の犠牲者は、カヲルさんです」
勝てる。
この選択で間違ってないはずだ。
彼はさっきかなり冷静に状況を分析していた。
残ったメンバーの中でいちばん厄介なはず。
思わず将軍の顔を見そうになるが、そんなことをしたら致命的なミスになるかもしれないのでこらえる。
こんなところで辺に勘ぐられてはならない。
うん。
これでいいはず。
大丈夫。
いけるはずだ。
将軍が予言者だと言い出したときは「こいつなにやってんの!?」と思ったが、それからの展開は見事の一言だった。
口八丁でみんなを誘導し、うまく本物の予言者をしとめてくれた。
おれは目立たないようにサポートに徹するだけで十分だった。
最後の仕上げはおれひとりの手で行わなければならない。
彼らが相手ならうまくいくはず。
何度も自分に言い聞かせる。
大丈夫、将軍なしでもきっといける。
「誰が人狼なのよ」
重苦しい空気に、またあの女の声が響く。
かなりいらついているようだ。
声にトゲがある。
それもそうだろう。彼女がいちばん将軍にのせられた形になった。
ここからさらに彼女を利用すれば、おれたちの勝ちは間違いない。
「とーちゃん、イヴさん、刹那。あんたちの誰が人狼なの?」
とーちゃんは未だに状況がわかっていないようで、みんなの顔をきょろきょろと見回している。
おれもうつむいたままだ。
「あの」
言葉を返したのはイヴだ。
「こんなことを言うのはなんなんですが、ルミさんが村人だという証拠もありませんよ」
ルミは一瞬きょとんとして黙った。
言葉の意味が理解できると、即座に反論を始める。
「は? ルミ、村人だし」
「だから、そんなことを言い始めたら、みんなそう言うに決まってます」
そう。
うまい。
いい展開だ。
やはり彼女を残しておいてよかった。
「だってルミ、予言者に村人だって言われたし!」
言った後で、ルミは「しまった」という表情になった。
ふふ。
墓穴を掘ったな。
「それは本物の予言者であればのことです」
ルミは言葉を返せない。
彼女を村人だと予言したのは人狼である将軍だ。
そんなことなんの意味もない。
むしろ人狼に村人だと予言されたことは何を意味するのか、どうやらルミも分かったようだ。
「翔くんが言いましたよね? 仲間である人狼をみんなに村人だと信じ込ませた方が都合がいいと」
「た、確かに言ってました」
おれはイヴの後押しをする。
もう少し。
もう少しだ。
おいおい、そんなににらまないでよ。
「ルミが人狼だって言うの?」
「そういう可能性もあるということです」
「だったら、あんたも同じでしょ?」
「もちろんそうです。だから、ルミさんだけ特別扱いすることはできない、と言っているだけです」
ルミがまた口を閉ざす。
「今、残っているのは4人です。なので、この昼でゲームは終わるでしょう」
「え? そうなんですか?」と、とーちゃんが口をはさむ。
このおっさん全然分かってないじゃん。
こっちとしてはその方が都合がいいけど。
「ここで人狼をリンチにかければもちろんわたしたち村人の勝ちです。しかし、ここで村人をリンチにかけてしまうと、夜にもうひとりが襲われ、村人の負けになります」
「あー、なるほど」
「つまり、どちらにしろ、ここが最後となります」
「納得です。ありがとうございます」
話の展開から考えると、イヴはルミを疑っているようだ。
とーちゃんの腹は読めない。
彼がイブに向かえば、3対1で勝てる。
どうすればいい?
「わたしはルミさんが怪しいと思います」
いろいろ考えているうちにイヴが話し出した。
いい流れだ。
「理由はさっきも述べましたが、人狼に村人と判断されたからです。仲間を隠すためのカモフラージュだったとわたしは考えます。さらに彼女の発言によって、本当の予言者である翔くんが選ばれてしまったのでは、と今では思っています」
完璧な理由。
おれの描いた通りの展開だ。
ここで決める。
「えと。お、おれもルミさんだと思います」
一応襲ってこないか確認するが、ルミはもはやほとんど感情を出していなかった。
自分の負けを悟ったのか。
ちょっと申し訳ない気もするが、これはそういうゲームだ。
「あの、理由は今、イヴさんが言った通りです。今考えると彼女の言葉は村人にとって不利に働いてたのではと思います」
おれたちの視線は自然と、とーちゃんに向いた。
彼は何やら考えているようだ。
今更何を考えることがあるんだ。
早くおれたちの意見にのれ。
そうすれば終わりだ。
「あの刹那くん」
「は、はい」
「あなたは高校生ですか?」
な、なんだ、こいつ。
何言ってるんだ?
ゲームに関係あるのか。
「はい」
「ふむふむ」
穏やかなとーちゃんの表情が、なぜか今では恐ろしいもののように感じられる。
何をしようとしている?
何を見ている?
「では、あなたは人狼ですか」
「え? いえ、えと、村人ですけど」
「そうですか」
なんだなんだなんだ。
何を言い出した。
何かミスしたか。
してないはず。
ただの戯言だ。
気にするな。
落ち着け。
落ち着くんだ。
「わたしは刹那くんが人狼だと思います」
は?
えーーーー!
「なぜですか、とーちゃんさん?」
イヴが尋ねる。
「彼にはクセがあります。もちろん本人は気づいてないんでしょうけど」
クセ?
どんなクセだ?
「彼は嘘をつくとき、身体のある部分に反応がでてしまいます」
そんな馬鹿な!
「ど、ど、どこにそんな反応が?」
「え? それは言わないでおきましょう」
とーちゃんはにこっと笑った。
まさか、こんなところに意外な伏兵が。
くそっ。
なんてこった。
こんなのありかよ!
「ごくわずかな動きですので、普通の人は気づかないかも知れません。わたし、そういうのに敏感なもので」
おれは赤面してうつむいた。
イヴが驚いた表情でおれを見る。
ルミは目を見開いている。
とーちゃんはにこにこしたままだ。
バンッと大きく机をたたく音がする。
「泉さん、最後の投票をしましょう!」
目を輝かせたルミが司会に紙をせがむ。
おれは完璧にやったはず。
なのに。
それなのに。
3人はすぐに投票を終える。
どうしようもなくなったおれも、しぶしぶ紙を投票した。
「えー。それでは」
司会が声を張って、みんなに呼びかける。
ほかの3人は立ち上がっていたが、おれにはその気力もなかった。
「開票します。刹那くん、刹那くん、ルミさん、刹那くん」
「おーー!」
脱落者席からどよめきが起こる。
「よって、今回の脱落者は刹那くんです。そして」
目の前に置いていたカードが表にされる。
「彼の正体は人狼です。人狼はすべて撃退されました。村人チームの勝利です」
その声が終わるか終わらないかで、歓声と拍手が起こった。
ルミとメグが抱き合っている。
とーちゃんは翔の頭をなでて、タケヤマとカヲルは握手をしている。
やたらとみんなが遠くに感じられた。
負けた。
負けてしまった。
「惜しかったね」
いつの間にか後ろに立っていた将軍がおれの肩をたたく。
「すみませんでした」
「いやいや、キミはよくやったと思うよ」
将軍の口調はさっきまでとは違い、くだけたものだった。
これが普段の口調なのだろう。
おれは恥ずかしくて、彼の顔が見られない。
「まさか、あんな決め方をされるとはなぁ。想定外だった」
くやしそうに将軍が言う。
「キミにクセなんてあるかな。おれにはそんなの見えなかったけど」
そう言って将軍は頭をひねった。
身体のある部分が反応する。
どこが反応するんだろう。
おれはいても立ってもいられなくなり、喜びの輪の中に近づいた。
「あの」
「はい? あー、刹那くん。残念だったねー」
とーちゃんがおれに握手を求めてきたので、それに応える。
「あの」
「ん?」
「おれのクセってなんですか?」
「気になる?」
「はい」
腕組みをしながら「どうしようかなぁ」と、とーちゃんは迷う素振りを見せる。
「お願いします。教えてください」
「嘘だよ」
「え?」
嘘?
なにが?
「キミにクセなんてない」
「え?」
「ルミさんが嘘を言ってるようにも見えなかったから、適当にかまをかけてみたんだ」
「え?」
「だって、このゲーム、嘘ついていいんだよね?」
とーちゃんは、いたずらっ子のように、にやっと笑った。

end


キミが人狼 6

20120223114226

キミが人狼1 キミが人狼2 キミが人狼3

キミが人狼4 キミが人狼5

「みなさん、投票しましたね。それでは開票します」
固唾をのんで行く末を見守る。
最も緊張しているのは、将軍と翔くんだろう。
翔くんはまっすぐな目で泉さんを見、将軍は不適な笑みを浮かべている。
「翔くん、翔くん、将軍、刹那くん、将軍、翔くん、将軍」
やはり票はふたりに分かれた。
刹那くんに投票しているのは恐らくルミだろう。
たぶんさっきも。
3対3。
残りは1票だ。
泉さんがゆっくりと最後の1枚を開く。
それからみんなの方を見た。
「翔くん」
4対3。
今回の脱落者は翔くんだった。
「くそっ」と小さな声が聞こえる。
とーちゃんが優しくその背中に手を当てる。
気になるのは彼の正体だ。
翔くんのすぐ隣に立っていた泉さんは、翔くんのカードを拾い上げた。
「彼は、人狼ではありません」
「えー、そんな」
「やっぱり」
場がどよめく。
視線が将軍に集まる。
将軍は何も言わず、少しうつむいて、にやにやしている。
彼が人狼だったのか。
翔くんは悔しそうに将軍をにらんでから、席を離れた。
「残念ながら、またしても人狼をつかまえることはできませんでした。それではみなさん、夜が来ます。目をつぶってください」
将軍の巧妙な策により、本当の予言者である翔くんを村人の手で殺めてしまった。
これは村人側にとっては大ダメージだ。
次の昼、将軍がリンチにかけられることは間違いない。
だが、恐らくそんなことは計算のうちなのだろう。
予言者と偽ったということは、彼の目的は本物の予言者と共倒れになることだったに違いない。
それにまんまとひっかかったのだ。
彼の方が一枚上手だったと言わざるを得ない。
「みなさん、目をつぶりましたね。それでは予言者、目を開けてください。そして、今回予言する人を選んでください。わかりました。いいですか?」
本当の予言者は翔くんだった。
でも、ルール上この予言をする行程は必要なんだろう。
たとえ予言者が生き残っていなくても、それを明言することはできないのだ。
なにしろ将軍は自分が予言者だと言っているし、ほかに予言者がいた、という可能性もゼロではない。
「では、また目をつぶって。それでは、人狼、目を開けてください。今回は誰を選びますか」
人狼のひとりが将軍なのは間違いない。
だが、もう1人は誰なのだろう。
候補として残っているのは、タケヤマさん、カヲルさん、刹那くん、ルミ、イヴ、とーちゃんの6人だ。
ここから先はまだほとんど情報がない。
でも、たぶん選ばれそうなのは……。
「わかりました。みなさん、また新たな犠牲者が出てしまいました。残念なことです」
泉さんが立ち止まった。
「それでは目を開けてください」
そうか。
やられた。
「今回の犠牲者は、彼です」
選ばれたのはタケヤマさんだった。
いつの間にかみんなをまとめていた、しきり役を失ってしまった。
誰かが話をまとめないと、人狼にいいように誘導されてしまうかもしれない。
もちろんそれが人狼たちの目的なのだろう。
確実にひとつ、またひとつと大事な仲間が失われていく。
あたしたちはまだそれを止めることができない。
「なるほど。わたしですか」
タケヤマさんは困った顔をして、頭をかいた。
「もちろん、彼の正体は人狼ではありません」泉さんがカードを確認しながら言う。
「みなさん、がんばってください」と言葉を残し、タケヤマさんが輪から離れる。
「それでは3日目が始まります。まだまだ平和は訪れません。人狼はみなさんを狙っています。早急な解決が求められます。では、話し合いを始めてください」
場の空気が重い。
またしても仲間である村人を2人も失ってしまった。
しかもどちらもが今まで重要な役割を担っていた2人だ。
村人側のショックは大きい。
「あんた、人狼なの?」
最初に沈黙を破ったのは低い女性の声だった。
冷え切った目線でルミが将軍をにらむ。
「はてさて。それはどうでしょう」
将軍は必死に虚勢を張って、とぼけた。
内心はルミに襲いかかられるのではないかと心配しているに違いない。
もちろんそうなったらあたしが止めに入らなきゃない。
「ところでみなさん、今回のわたくしの予言を聞きますか?」
「いらないわよ、そんなの!」
さっきまで信じていた将軍に、見事に騙されていたことを知り、ルミは激しく自己嫌悪に陥っているようだ。
機嫌の悪さが増しているのがとるようにわかる。
しかも自分の発言が引き金となって、翔くんを失ってしまったという負い目もあるのかもしれない。
「もう話し合いも何もないでしょ。今回はこいつで決まり。なんか意見ある?」
そのままルミが話をまとめる。
反論はでない。
それはそうだろう。
予言者の片方が人狼だということはさっき話したばかりだし、翔くんは人狼ではなかった。
将軍が人狼と考えて間違いない。
「泉さん」
「はいはい。今回は早く決まりましたね」と手際よく紙を配る。
みんなほとんど考える間もなく、記入を始める。
結果はすぐでた。
将軍が5票で最多得票。
もう1票はルミだった。
入れたのは将軍か。
「それでは、彼の役割を確認します」
将軍はしれっとした顔で右斜め上を見ている。
なんてふてぶてしいやつ。
「彼の正体は人狼です」
何人かが深く息を吐いた。
ようやくこれで片方をつかまえたことになる。
「えと」
刹那くんがみんなの視線を集める。
「これでゲームは終わりますか?」
え?
どういうこと?
人狼をふたりともつかまえなきゃないんじゃないの?
「は? あんた何いってんの?」投げやりな口調でルミが言葉を投げる。
「えと、あの。一応確認です」
「だからどういうことよ」
「え? えと」
「ゲームは続きます」
泉さんがその間に入る。
「刹那くんの言っていることは、本当に片方がライカンだったかどうかの確認です」
「え?」
「これまでに正体が人狼だと判断された方はふたりいます。メグさんと将軍ですね。もし彼らがふたりとも人狼だった場合、人狼は全員リンチにかけられたことにゲームは終わります」
あー、そうか。
自分がライカンだとわかってたから、その可能性はまったく頭になかった。
ほかの人にしてみれば、あたしがライカンだということは確実なことではないのだ。
「しかし、ゲームは続きます。つまり、まだひとり、人狼が村に潜んでいます」
みんなの視線が部屋の中を交錯する。
「3日目の夜が来ます。みなさん目を閉じてください」
ここでまた犠牲者が出るのか。
このままだと負けてしまうんじゃ?
人狼の手のひらで踊らされているような気になってくる。
きっとそんなあたしたちの様子を内心ほくそ笑んでいるのだろう。
なんとか。
なんとか勝ちたい。
「では、予言者、目を開けて。今回の対象を選んでください」
例によって泉さんが歩きながら語り出す。
「はい。では、人狼、目を開けて。今回のターゲットを選んでください」
これでひとりが脱落すれば、残りは4人。
村人3人の人狼が1人だ。
次の昼、うまく人狼をリンチにかけることができればもちろん村人の勝ち。
けれども、間違ってしまうと、村人が2人になり、夜にもうひとりが襲われ、人狼の勝ちとなる。
勝敗は次の昼に決まる。
果たしてあたしたちは狡猾な人狼に勝つことができるのだろうか。

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キミが人狼 5

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キミが人狼1 キミが人狼2 キミが人狼3

キミが人狼4

「ルミは、この人を信じます」
隣にいる将軍をちらっと見ながら、申し訳なさそうにルミが言う。
翔くんは黙ってそれを見ている。
よく見るときつく下唇をかんでいた。
「それはなぜでしょう?」とタケヤマさんが問う。
「最初の予言で、この人はルミのことを村人だと言いました」
「そうでしたね」
「そしてその予言は当たっています」
「なるほど。真実を予言した将軍こそが本当の予言者だと思うわけですね」
「はい」
ルミはちらっと翔くんの方を見た。
翔くんはうつむいたままだ。
「ぼくもそれはあると思います」
言葉を継いだのはカヲルさんだ。
「もし将軍が偽物だったら、村人であるルミさんのことを人狼だと言うこともできたでしょう。そうすれば、疑いの目はルミさんに向かいます。そうしなかったのは彼が本物の予言者だったからではないでしょうか」
今まであまり発言してこなかったが、彼も自分なりにしっかり考えていたようだ。
落ち着いた、ゆっくりとした話し方が、かなりの説得力をもつ。
「そういう考えもありますね」話を聞きながらタケヤマさんが何度かうなずいた。
「えと」
また小さく刹那くんが手を挙げている。
今までの展開を考えると、刹那くんの発言は、そのおどおどした態度とは裏腹に大きな影響を場に与える。
今度はどんな発言が出るのだろう。
「あの。ふたりともが人狼とも考えられないでしょうか」
ふたり?
将軍と翔くん?
誰と誰?
「ふたりというと?」
タケヤマさんは腕組みをしたまま、隣の刹那くんに尋ねた。
「将軍とルミさんです」
彼がそう言った瞬間に、机がバンッと大きくたたかれた。
思わず身体がびくっとなる。
みんなが驚いた表情で一点を見ている。
もちろん視線の先は、ルミだ。
顔全面に怒りを表し、立ち上がっている。
「あんたねえ、ルミに何か恨みでもあるわけっ!」
髪を振り乱しながら、ルミは何度も刹那くんを指さした。
ああ、こういう心配もあった。
ゲームとは関係ないことだけど。
「いや、あの」
刹那くんは目をきょろきょろさせている。
まさかこんなに怒鳴られるとは思いもしなかっただろう。
「ルミ」
発言は禁止されているが、このくらいは大丈夫かな。
「落ち着いて」
「だって」
「いいから、座りなさい」
念のため、泉さんの顔を伺うが、彼もちょっと困ったなという表情を浮かべるだけで、あたしのことを止めようとはしなかった。どうやらルミを落ち着かせる行為は問題なさそうだ。
「あなたももう大人なんだから、そうやってすぐムキにならないの」
「だって、こいつが」
彼女は今にも刹那くんに飛びかかりそうだ。
刹那くんは顔面を蒼白にして、イスをめいっぱい引いている。
ルミの隣の席の将軍もどうしたらいいかわからず固まり、斜め向かいのとーちゃんは立ち上がって、あたふたしている。
「これは話し合いのゲームなの。あなたも自分の言葉で参加しなさい。あまり感情的にならないで」
「だって!」
「ルミ」
「わかったよ」
しぶしぶといった感じでルミは、また席についた。
「みなさん、すいません。この子、すぐ感情的になる面があって」
自分の子がしでかしたイタズラを謝るように、あたしはみんなに頭を下げた。
ほんとこの子は昔から変わらないんだから。
何度同じような目に遭ったことか。
「ほら、あんたも謝るの」
「えー」
「ルーミ」
「……ごめんなさい」
ルミは口をとがらせている。
場の雰囲気もなんとなく落ち着く。
とーちゃんも再び自分の席に戻り、将軍はわざとらしく咳払いをしている。
刹那くんはイスを引いたままだ。
「すいませんでした。ゲームを続けてください」
あたしはまた頭を下げた。
「えーと」
ゲームを再開させようと、タケヤマさんが話し出しす。
「刹那くんがそう考えたからには、もちろん理由があるわけだよね」
「え? あ、はい」
声をかけられ、ようやく我に返ったようで、彼はイスを元の場所まで戻した。
「それを聞かせてくれるかな」
「え、えと。あの、でも」
まだきょろきょろしている刹那くんがちらちらとルミの顔をうかがう。
ルミは憮然として、そっぽを向いたままだ。
「えと、その」
「仲間である人狼を、みんなに村人と信じこませた方が都合がいいからです」
驚いたことに発言の主は翔くんだった。
隣のとーちゃんもびっくりしている。
「正体が村人と判断されたルミさんはリンチの候補から外れます。それなら安心して毎晩村人を襲うことができます」
やはり経験者だけある。
小学生だからとあなどってはいけない。
ゲームに入り込みはじめた彼は、最初のもじもじしていたときとは別人のようだ。
ルミの様子をうかがうと、さすがにさっきのことを反省したのか、それとも相手が小学生だからか、今度はかみついてこなかった。
「なるほど。彼の意見ももっともだな」タケヤマさんはちょっと感心しているようだ。
「人狼は嘘つきである。これはルール上必然だ。となると、偽の予言者の予言もまた、疑ってかからなきゃないわけだ」
「そうなると今回は誰を選ぶべきなんでしょうか」
隣に座る息子とタケヤマさんとに、交互に視線を向けながらとーちゃんが言った。
心情的に、もちろん息子には投票したくないだろう。
「ルミ、人狼じゃないもん」
誰に言うともなく、ルミがつぶやいた。
「みなさん。このままだと意見は平行線をたどりそうです。今回はおのおのの判断で投票するということでどうでしょう」
タケヤマさんが話をまとめにかかる。
確かにこのまま言っても水掛け論になりそうだ。
みんなもそれに同意のようで、反論はでなかった。
「さてさて、2日目はちょっとしたトラブルが発生しましたが、これくらいでよさそうですね」
泉さんが再び紙を配り始めた。
将軍と翔くん。
選ばれるのはどっち?

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キミが人狼 4

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キミが人狼1 キミが人狼2 キミが人狼3

「全員投票しましたね?」
確認の声がかけられ、ところどころから「はい」「しました」などの同意の声が聞こえる。
「それでは、ひとつひとつ名前を読み上げていきます」
緊張の瞬間だ。
「メグさん、メグさん、翔くん、メグさん、メグさん、刹那くん、メグさん、メグさん、メグさん、メグさん」
やはり、か。
「メグさんが8票で最多得票です。よって今回の脱落者は、メグさんとなります」
ルミが気まずそうにあたしの方を見てくる。
ほかにも何人かが申し訳なさそうな視線を向けてくる。
「みなさん、そんな顔で見ないでくださいよー。あたしが自分から言い出したことなんですから」
「でも」
何か言いたそうなルミを手で制する。
「ルミ、がんばってね。絶対勝つんだよ!」
「うん。……わかった」
「ふふ」
不安そうな表情を浮かべるルミの頭をくしゃっとなでる。
ほんとにこの子は感情がすぐ顔にでる。
こんなことで、上手に嘘がつけるのだろうか。
それにしても、予想していたとは言え、ちょっと気持ちが沈んだ。
早くも脱落者第一号となってしまった。
「それでは、正体を確認させていただきます」
いつの間にかそばに来ていた泉さんがあたしのカードを手に取った。
ルミにばっかり気を取られていたので、全然気配に気づかず、思わず「うわっ」と声に出して驚いてしまった。ちょっと恥ずかしい。
泉さんはカードを確認すると、全員の顔を見回した。
「彼女の正体は、人狼でした」
みんなの反応は、さほど大きくない。
「それはもちろんライカンである、という可能性もあるわけですね」とタケヤマさんが確認する。
「もちろん。その可能性もあります」
確かにあたしはライカンである。
それを言ってしまえば村人側が有利になるのだが、当然ルールで禁止されている。
あたしは口をきつく結んだ。
「それではメグさん、今の席を離れて壁側のパイプイスに座ってください。あと、これから脱落する人も同様にしてくださいね。その方が誰が残っているのかわかりやすいので」
指示に従い、パイプイスに座る。
文字通り、輪から抜けた感じがして、ちょっと寂しい。
でも、そういうゲームなんだからと割り切り、努めて表情は暗くならないようにした。
こんなことで変に気を遣われても申し訳ない。
すぐにもうひとりの脱落者がでることも決まっているのだ。
「ではみなさん」
場を仕切り直すように泉さんが大きな声を出した。
「最初の夜が訪れました。みなさん目を閉じてください」
「えーと、あたしは?」
「メグさんも閉じてた方がいいですね。表情に出ちゃうこともありますので」
「あー、そうですね。わかりました」
会話には参加しないといったものの、表情まで抑えきれるかは分からない。
ここで人狼の正体を見てしまってはマズイだろう。
あたしも目を閉じた。
「みなさん、目を閉じましたね。それでは予言者、目を開けてください。そして、今回予言する人を指さしてください」
さっきと同様に歩きながら泉さんが語り出す。
いったい誰が人狼なのだろう。
「はい。わかりました。では、目を閉じて」
あたしがライカンなので、人狼はまだふたりとも無傷ということになる。
これは村人にとってはかなりの脅威だ。
「では、人狼、目を開けて」
今、目を開けているふたりは誰を選ぶのだろう。
考えてみると、このゲームにおいて、予言者の存在はかなり重要だ。
村人たちにとっては強力な仲間、人狼たちにとっては大きな障害となる。
そう考えるならば、まず狙われるのは予言者のはず。
となると、将軍。
または翔くん。
たぶん彼らのうちのどちらかだろう。
「人狼は今回のターゲットを決めてください」
さあ、どっちが襲われる?
「わかりました。では、人狼、再び目を閉じて」
周りを歩きながら、語りかけていた泉さんが足をとめる。
「大変残念なことですが、最初の犠牲者が出てしまいました」
犠牲者は誰?
「みなさん、目を開けてください」
え?
泉さんの位置を見て驚いた。
彼はアダムさんとイヴさんの間に立っていた。
そこに予言者候補はいない。
「今回の犠牲者は、彼です」
そう言って、泉さんはアダムさんの役割カードを拾い上げた。
「もちろん、彼は人狼ではありません」
「えー、なんでわたしがっ」
納得できない様子でアダムさんが大きな声をあげた。
あたしもそう思った。
なぜ人狼は予言者を狙わなかったのだろう。
「それでは、アダムさん。これで脱落ということになるので、席を離れてください」
「は、はい。うーん。なんなんだよ、このゲームは」
アダムさんは小声で愚痴りながら、あたしと同様にパイプイスに腰掛けた。
「これから2日目が始まります。まだまだみなさんの身は安全ではありません。一刻も早く人狼をつかまえましょう。でないとみなさんの身に危険が及びます。それでは、今回誰をリンチにかけるか話し合ってください」
その深刻な言葉とは裏腹に泉さんは、にこっと笑った。
司会は司会でゲームを楽しんでいるようだ。
「最初の犠牲者はアダムさんか」
タケヤマさんが口火を切る。
「彼を狙わなければならない理由があったのか、それともただの気まぐれなのか。正直、この段階で彼に脅威があるとは思えないが」
そう言いながら、タケヤマさんは視線を動かす。
もちろん、その視線の先にはあたしたち脱落者と、司会の泉さんがいる。
「あの」
刹那くんが小さく手を挙げた。
「ん? なんだい、刹那くん」
いつの間にかしきり役になっているタケヤマさんが刹那くんの発言を促す。
彼の雰囲気はどことなく学校の先生を思わせる。
もしかすると教育関係者なのかもしれない。
「えと、人狼はなぜ予言者を狙わなかったのでしょう」
「それどういうこと?」とルミ。
「えと、その、あの」
刹那くんはどうも面と向かってルミを見ることができないようで、もじもじしている。
あまり女性と話すことに免疫がなさそうだ。
「このゲームにおいて、予言者の存在はかなり重要です」
言葉につかえている刹那くんに代わって、タケヤマさんが話し始めた。
「さっきのメグさんがライカンだったと仮定すると、今後、人狼と判断された人は、確実に人狼と見なされます。なので、もし、人狼が自分の正体を暴かれてしまった場合、リンチは必須となります。とすれば、早めに予言者の口を封じてしまうのが最善でしょう。そういうことだよね、刹那くん?」
「あ、はい。そうです」
「へえ、そんなことまで考えてるんだ」
「そういうゲームですからね」タケヤマさんが軽くほほえんだ。
「こうは考えられないでしょうか」
今まであまり発言してこなかったイヴさんが手を挙げた。
「現在、予言者を名乗っている方はふたりいます。本当の予言者はひとりなので、もう片方が偽物なのは当然です。しかも、村人がわざわざ予言者と偽ることも考えがたいので、偽物は人狼だと考えるのが自然でしょう」
「そうですね」
「けれども、もしここで予言者を襲ってしまうと、生き残った方は必然的に人狼になります。となると、人狼はここで予言者を襲うことはできないのでは?」
「なるほど。だから、人狼は今回、予言者を襲いたくても襲えなかったというわけですね」
「だと思います」
そうか。
邪魔だからって単純に襲ってしまってもだめなのか。
その辺を見越して、ターゲットを選んでいるとすると、人狼はかなり考えてプレイしているに違いない。
経験者なのかな。
そういえば翔くんと将軍、どちらもが経験者だ。
「おほん」
将軍が咳払いをした。
「お話中のところ、大変申し訳ないのですが、今回わたくしが誰を予言したか発表してもよろしいでしょうか」
「ああ、そうですね。重要なことでした」
「えー、それでは。……と、待てよ」
大仰に話し出そうとした将軍が言葉をとめる。
「そういえば、もうひとり予言者がいましたな」
自然とみんなの視線が翔くんに向く。
「先にその幼き予言者の意見が聞きたいものですが、よろしいでしょうか」
翔くんはきょろきょろとみんなの顔をうかがった。
隣で心配そうにとーちゃんが見ている。
「翔くん、いいかい?」
「はい。ぼくは、あの人を見ました」
まっすぐと将軍を指さす。
将軍は片眉をあげて、にやりと笑った。
「ほう。面白い。わたくしの正体はなんでしたか?」
「人狼でした」
さっきと同じように指でWの形を作り、はっきりとした口調で言い切った。
「え、あんた人狼なの?」
びっくりしたルミが隣の将軍から、ちょっと距離をおいた。
もう。本当に襲われるわけじゃないんだから。
「まぁそう言うしかないでしょうな。ふふふ」
「で、将軍。あなたの予言は?」
「もちろん、わたくしも、もうひとりの予言者を見ました」
それぞれの視線が、将軍と翔くんの間を行ったり来たりする。
「恐ろしき少年です。彼こそが、人狼なのですから」
挑発するような目で将軍が翔くんを見ている。
翔くんは真っ向からその視線を受ける。
予言者がふたりとも、相手こそが人狼であると言い張っている。
これは自然な流れだろう。
ここで別な人を予言するメリットはない。
そして今、本物の予言者をリンチにかけてしまえば、人狼のメリットは計り知れない。
「さて、困ったことになりました」
タケヤマさんが話を進める。
「現段階で、人狼候補がふたり現れました。今回はこのふたりのうち、どちらかを選ぶということでいいのではないでしょう」
「そうですね」
「問題は、どちらを選ぶか、ということです」
場が静まりかえる。
みんなどちらを選ぶか考えているのだろう。
今、考える手がかりになるようなものがあるだろうか。
「ちょっといいですかー」
最初に口を開いたのはルミだった。

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